製品開発プロセスを体験し、新製品を提案!
2025.01.14
食物学科食物学専攻の3,4年次を対象として2021年度から前期に実施している「食品開発学実践演習」は、在学生をはじめ卒業生たちからも印象に残っている授業としてたびたび名前が挙がります。授業を担当するのは、本学科を卒業後、大手食品関連企業に入社し、製品の企画開発やレシピサイトの運営、コミュニケーション戦略策定などの多様な業務に携わられてきた非常勤講師の森村恵理子(もりむら えりこ)先生。食品関連企業への就職を希望する学生のために、製品を上市するまでの一連のバリューチェーン(VC)を踏まえて、実際に新製品の企画開発をする実践的な授業です。
アイデアを磨き
プレゼンテーションで発表
全14コマの授業は以下の3つの目的を持って行われました。
① 食品関連企業のさまざまな業務や製品発売までのバリューチェーンを知る
② 実際に製品を企画し、試作するという具体的プロセスを通して理解を深める
③ ディスカッションやプレゼンテーション体験により、コミュニケーション能力を磨く
学生たちは、3~4人のグループに分かれて、新製品の企画開発に取り組みます。まずは1人3つずつ製品アイデアを出し合い、コンセプトテストを経て、グループのアイデアを1つに絞りました。その後、試作品の調理やプロダクト調査、コミュニケーション戦略の策定などを経て、アイデアを磨いていきます。
授業最終日には、製品アイデアを発表資料にまとめ、1チーム18分の持ち時間でプレゼンテーションを行いました。今年度の学生たちが企画開発した新製品アイデアは以下の6つです。
?魯肉そぼろ
?おからでつくるパンケーキミックス
?いもいもにょっき
?ケチャゴロー
?やさしい甘さアップルパイ風ミニ春巻き
?もっちりねっとり食感おさつパフェ
どのチームも授業内で森村先生から教わったアイデア具現化のプロセスを踏まえて、市場背景や競合の整理、製品特長やパッケージデザイン、コミュニケーション計画、損益計算書などを資料に盛り込み、説得力のある発表を行っていました。
それぞれの発表後には、参加した食物学科の先生方を「上司(承認者)」に、発表グループ以外の学生を「新製品を売る立場の営業」に設定しての質疑応答の時間も設けられ、活発な意見交換が行われていました。
授業の最後に森村先生は「どのグループのプレゼンテーションも資料がしっかり作り込まれ、説明も質疑応答も堂々としていて、素晴らしい発表でした。社会に出ると『発言しない』は『何も考えていない』ことと同じになってしまいます。そのため、授業ではみなさんに発言やアウトプットする機会を多く作りました。この授業をきっかけに『自分はどう思っているのか』『自分は何がしたいのか』を積極的に発信しながら、これからの人生を切り拓いていっていただけると嬉しいです」と学生たちにメッセージを送りました。
【授業を受けた学生のコメント】
授業の2?3日目には実際にみんなが考えてきた製品アイデアを発表して製品を絞り、最終的に1つを選んでその案をブラッシュアップしましたが、振り返ると、この段階が一番大変だったように感じます。そもそも、今スーパーやコンビニでは販売されていない新製品を3つ考案することが非常に難しかったのですが、それ以上に、12個の案を1つに絞るのに苦労しました。相手の意見を尊重しながら自分の意見をわかりやすく伝えることが想像以上に難しく、なかなか議論が進展しなかったことが、苦労した一番の要因であると考えています。
また、5?6日目は、試作後の他の班からの評価を踏まえて製品案をさらに磨き、発表に向けてコンセプトやコミュニケーション戦略などを確定する活動を行いましたが、中でも損益計算表の作成が一番印象に残っています。最初に計算してみたら利益が19%程度になってしまったため、できるだけ最安値に近い原材料を探してみたり、使用しなくても良い原材料はないか再検討してみたりするなどの試行錯誤を重ねたのですが、そこではじめて、一定以上の利益を上げられるように製品の価格を設定することの難しさを実感しました。
実際に体験させていただけたからこそ、とも思うのですが、事業部のお仕事がとても好きだなと感じました。好奇心を持って社会を見つめ、汲み取ったニーズに対して、製品という形あるものに落とし込んでいくこと、市場調査やターゲットを設定するところから、製品化するまで、最初から最後まで手掛けられること、それまでに喧々諤々の議論を繰り返せること、グループ内はもちろんのこと、試食のときに他のグループからアイデアをもらったり、それについて再度検討し直してまた、意見をもらったり、試行錯誤していく過程で関わる人たちへの感謝の気持ちがいつもあったこと、今回経験させていただくなかで、自分の中の「好き」「楽しい」という感情が何度も揺り動かされたことが、将来この仕事をやってみたい、という気持ちにつながりました。
今回は1つの製品を企画しただけですが、たった1つでも「どのような製品名だとお客さんのイメージとマッチするか」「価格はどのくらいが妥当か」「味と食感をこだわるためにはどんな分量で作るべきか」などこだわり出すと本当に考えることが多く、食品企業の方の仕事がいかに複雑かを痛感しました。授業内で試作する前にグループのメンバーがそれぞれの自宅で試作を行ったのですが、1つ分量や工程を変えるとテクスチャーや見た目に違いがあり、「次はこうしよう。ここを変えてみよう」と改善していくうちに自分たちのイメージにより近づいていることを感じました。しかしその作業には非常に時間を費やし、食品企業で行う本格的な製品企画はもっと時間と費用をかけて行われていると想像したため、「製品企画は面白そうだからやってみたい」と何となく考えていた食品企業のイメージはこの講義を通して一変しました。